あらすじ
大手広告代理店に内定した主人公は、かつて夢見た「安定した将来」を手に入れたはずだった。しかし、その実態は、人員削減とAIへの置き換えが進む企業の最前線。配属予定のAIクリエイター部門は、人間の感性を教える名目で、若手を“教師”として搾取するだけの空虚な部署だった。
一方、政界では「新しい資本主義」や「未来投資強化月間」といったスローガンが繰り返され、テレビもネットも「夢と希望」で溢れている。だが、現実は物価高、就職難、そして漂う無力感。内定式で交わされる空虚な祝辞、駅前で叫ばれる熱のない演説、テレビに映る綺麗事の数々——それらはまるで、絵に描いた餅のように、人々の空腹を満たすことはない。
母と食べる夕食、友人との冗談、SNSの皮肉めいた呟き。その一つ一つが、未来を信じたいという微かな願いと、信じきれない現実の狭間で揺れている。
社会のなかで“夢”を売り買いする時代。果たして私たちは、何を信じて生きていけばいいのか。
『絵に描いた餅』は、現代日本に生きる若者の目を通して、政治、経済、働き方、そして「夢」という言葉の空虚さと重さを描き出す、風刺的現代短編。現代の"希望"が、どれほど儚く脆いものであるかを、静かに、そして鋭く突きつける。