あらすじ
《──ツー、トン、ツー、トン。》
夢の中で繰り返されるモールス信号。
その「声」は、ただの雑音ではなかった。
名前も記憶もないまま、都市の片隅で保護された女性・エル。彼女はロボット工学研究所の助手として、平穏な日常を送っていた。だがある日、夢に響いた“誰か”からの信号が、彼女の運命を大きく動かし始める。
ツー、トン。と、耳に残るそのリズムは、ただの夢ではなかった。モールス信号として解読された文字列は、特定の座標を指し示していた。奇妙な導きに突き動かされ、エルは深夜の街を抜け、廃棄された路地裏へと足を運ぶ。
そこで彼女が出会ったのは、壊れかけのアンドロイド。ほとんどの機能が破損しているにもかかわらず、その胸の通信コアはかすかに明滅していた。「助けを呼ぶような光だった」と、エルは直感する。
彼の修復を進めるうちに、エルはある“違和感”を覚え始める。工具を握る手が、どこか懐かしい記憶に導かれるように動き、言葉にならない信号が、まるで胸の奥に直接届くように感じられるのだ。
夢の中で響く懐かしい風景。知らないはずの記憶の匂い。握っていたメモリーカード。彼の名を聞いたときに湧き上がる、説明のつかない感情──。すべてが、彼女の過去と深く結びついていた。
そして浮かび上がる、ある一つの可能性。 これは偶然の出会いではない。 信号は、確かに“私を呼んでいた”。
アンドロイドと人間の境界を越え、「記憶」と「想い」が交差する世界で、辿り着く真実とは。
──CQ、CQ。誰か、いませんか。
信号の先にあるのは、呼びかけか、それとも再会か。
これは、"繋がる"物語。