あらすじ

※縦読み推奨。 空軍の戦闘機パイロットであった向井は、合わない軍隊生活で心身ともに病み、地元へと帰る。 そこで親せきに紹介された仕事は、特殊な発電方法を用いている発電所の職員であった。 吸血鬼と元戦闘機乗りが織りなすゴシック・ホラー。 <以下、電撃大賞用あらすじ>※ネタバレ注意  元空軍の戦闘機パイロット・向井は軍隊生活に馴染めず、終戦と同時に退役した。結局、心身を病み、再就職もうまくいかず、地元へと戻る。  親せきから紹介された仕事は、すでにあと一年で廃炉が決まっている発電所の職員であった。老いた母を安心させるために、向井はそこへ就職をする。  だがその施設は、吸血鬼と呼ばれる異形の存在に太陽光を浴びせて発火させ、血液で再生させながら火力を得るという、異常な発電方法を採っていた。  向井は最初こそ吸血鬼の姿を見ることなく、平穏に業務をこなしていた。だが、ある日、部品の交換作業中に、再生直後の吸血鬼と遭遇してしまう。  その吸血鬼は驚くほど美しく、向井に語りかけてきた。彼の話術は魅惑的で、向井は次第にその言葉に引き込まれていく。  向井は、女性にも男性にも性的な欲望を持てない無性愛者だった。それゆえに軍隊でも人間関係に摩擦を生んでいた。吸血鬼はそんな向井に、「私たちも性的欲求に基づかずに血を求める。だから人を愛する形が君に似ている」と語り共鳴する。  それを聞いた向井は吸血鬼に「本当はあのまま戦争が続いていたら、戦闘機で敵艦へ突撃し、大好きな青い空で死ぬつもりだった」と告白をする。  やがて、吸血鬼が語っていた話は、すべて彼の創作であり、生まれてから一度も発電所の外に出たことがないと判明する。だが、向井はそんな嘘すら「面白い奴だ」と受け入れ、二人の間には、友情にも似た感情が芽生えはじめていた。  しかし、向井がふと気を緩めたその隙を突き、吸血鬼は彼に噛みついて血を吸い、本来の力を取り戻す。血の海に倒れ、死にかける向井に吸血鬼はこう告げる。「最後に、青空を飛んで死のうと思う」と。  発電所を破壊し、吸血鬼は空へと舞い上がる。  自分が思い描いた「死に方」を奪われた向井だったが、灰となる吸血鬼を見つめながら、彼の崇高なる死を、最初で最後の自由を受け入れるのだった。

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カクヨム2025/04/10
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