あらすじ

藤原は「千代子桜」の前に正座し、緑色の表紙の本を丁寧に取り出した。『百歳の回想 ―― 大正から令和まで 太田千代子の証言』。一年以上かけて編纂した本が、ついに出版されたのだ。 「千代子さん、約束の本ができました」  風が止み、辺りが静寂に包まれる。藤原の声だけが、柔らかに空気を震わせていた。 「あの日、『私の話が誰かの役に立つなら残してほしい』と言われたこと、覚えていますか? 僕は必ず形にすると約束しました。時間がかかってしまいましたが……ようやく、その約束を果たすことができました」  藤原は本の表紙を優しく撫でた。千代子さんの百十一年の人生が詰まった一冊。大正から令和まで四つの時代を生きた証が、そこにはあった。  桜の花びらが一枚、本の上に舞い降りる。  それはまるで千代子さんからの応答のようだった。 ※こちらは以下の本編の外伝にあたる物語となります。もしよろしければ本編もお読みいただけると幸いです。 【百歳超恋愛短編小説】九十五年目の桜 ―― 最後の春に咲いた愛 https://kakuyomu.jp/works/16818622172278165593

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カクヨム
カクヨム2025/04/07
  • 現在の作品【百歳超恋愛短編小説】九十五年目の桜・もうひとつの物語 ~ある介護士の記録~