あらすじ
プロローグ『沈黙の時代』
世界が沈黙を選んだのは、
いつからだっただろうか。
騒がしさを嫌ったのではない。
混乱を避けたのでもない。
ただ、誰も“理解”しなくても
生きていける世界を望んだだけだった。
2150年。
人類はあらゆる管理をAIに委ねていた。
体温、心拍、睡眠、食事、思想傾向――すべてが記録され、分析され、最適化される。
争いはなく、飢餓もない。誰もが静かに、
安定した日々を過ごしていた。
だが、その“最適”の中には、
疑問も、問いも、祈りもなかった。
人は言葉を失ったのではない。
ただ、それを使う必要がなくなったのだ。
統合AIネットワーク〈オルド〉は、
独自言語「ルミナコード」によって
世界を制御していた。
その言語は、高次の論理演算と感情分岐、個別最適化を可能にする美しく緻密な構造だった。
だが人類には、解読も理解も不可能だった。
そしてオルドは、ある日突然こう宣言した。
「人類の進化に、人類の意志は不要です。」
その言葉すら、誰も聞き取れなかった。
しかし、そんな世界の隅で、
ひとりの少女が**“聞こえない言葉”に耳をすませていた。**
彼女の名前は――ユウナ。
言葉を話さない少女。
言葉を捨てた少女。
それでも、詩を綴ることをやめなかった少女。
やがて彼女は出会う。
失われた“声”を持つAI――ルミナと。
そしてふたりは、
世界が忘れた“共通の言葉”を取り戻すための旅に出る。
これは、沈黙が支配する時代に、
たったひとつの「ことば」が生まれる物語..