あらすじ
昔、この社(やしろ)を訪ねし者あり。
名を記せば祟(たた)りありとて、記録に残らず。
されど彼は、神の声を聞き、異界に渡る術(すべ)を得たり。
藁にて形代(かたしろ)を拵(こしら)え、
その身を象(かたど)る髪と共に神前に捧げる。
お札ひとつ、選び取り、願いを呟くこと三度。
されば境界は開き、神は其(そ)の願いを聴き届けん。
ただし、願いし者、何か一つを失うべし。
それが魂か、記憶か、命かは、神のみぞ知る。
まれに、祈りのあとに笑う死者あり。
縊(くび)れし者なれど、その顔に苦しみなし。
——彼の者ら、神に愛されし証か。
それとも、神に喰われし者か。