あらすじ

「……もう、終わりにしよう」 幼なじみであり、恋人だった篠原美琴は、曇りのない声でそう告げた。 その隣には、見たことのない男が立っていた。 肩と肩が、自然に触れ合う距離。否応なく、関係を物語っていた。 「……あ、そう」 三神静馬は、ほんのわずかにまばたきした。 驚きや怒りはなかった。ただ、何かが音もなく落ちたような感覚だけが、胸の奥で響いた。 言葉は浮かばなかった。何を言っても、すでに意味はない。 彼女の中から自分が抜け落ちた、ただそれだけのことだった。 静馬はそのまま歩き出した。 行き先もなく、あてもなく。 気がつけば、かつて遊び場だった廃遊園地に辿り着いていた。 今では誰も近づかず、鉄の匂いと風の音だけが支配する場所。 フェンスの隙間を抜け、錆びたレールの下をくぐり抜ける。 止まったメリーゴーランド。色の抜けた看板。 その奥――崩れかけた観覧車の影に、ぽっかりと地下へと続く通路があった。 興味があったわけじゃない。ただ、足が勝手に向いていた。 階段を降りるたび、湿った空気が濃くなっていく。 その先にあったのは、異様な空間だった。 壁一面に貼られたお札。 その中心に、黒く焼け焦げたような石碑があった。 無数の鎖が巻きつき、それでもなお封じるように力を放っている。 まるで、“誰にも見つけられたくなかった”かのように。 その時だった。 頭の奥に、どこか色香を含んだ女の声が、すっと囁く。 「……久々の人間ね。  ねぇ、ちょっと付き合ってくれない? ヒマなのよ。封印されてから、ずっと」 静馬は、少しだけ眉を寄せた。 そして、ため息まじりに、ひとことだけ返した。 「……別にいいけど。オレもヒマだし」 それが、三神静馬と“封印された女”の、すべての始まりだった。

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カクヨム
カクヨム2025/05/24
  • 現在の作品彼女にフラれた俺は、封印された何かと暮らすことになった