あらすじ

錆びた鉄の扉を開けると、冷たい空気が鼻腔を刺した。

 アレン・アーゼルハインが屋敷の地下に降りたのは、七歳の冬だった。誰にも見つからないよう、夜明け前の時間を選んだのは無意識の選択だったのか、それとも何かに導かれたのか。

 地下の最奥にあったのは、一冊の記録帳だった。

 黄ばんだ羊皮紙に書かれた魔術文字。そこには、こう記されていた。

《第72号 被験体。魔力循環の兆候あり。外部出力不可。定着率80%。死亡確認:×》

 ページをめくるたびに現れる、無数の死亡記録と赤い「×」印。冷たい文面の中に、唯一“生きている”記号を持つ存在──それが自分だと、幼いながらにもアレンは気づいてしまった。

「……俺は、生まれてよかったのか?」

 誰も答えてはくれない。父は目を合わせず、母はただ遠くを見つめ、兄たちは侮蔑の目で見下ろすだけだった。

 アレンの魔力は、外に出せない。だから魔法は使えない。

 だが体の奥では、確かに何かが巡っていた。熱いものが、脈動のように。

「──なら、俺は俺のやり方で、証明してみせる」

 その日から、アレンは“魔法が使えない自分”を恥じるのをやめた。

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アルファポリス
アルファポリス2025/06/05
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