あらすじ

ある日の夕方、精神科医の男はパソコンの画面から顔を上げ、椅子からそっと腰を浮かせた。 音が聞こえたような気がしたのだ。不審に思い、耳を澄ます。おかしい、診療時間はとっくに終わっているし、最後に戸締りも確認したはずだが……。 男がドアに目を向けた瞬間――ゆっくりと開き始めた。 驚き、体が硬直する。そのまま目を凝らし見つめていると、そこから現れたのは―― 「え、鬼……?」 凝り固まった血のように暗く濃い赤の肌。小便を思わせる濁った黄色い目。汚泥のような茶色い腰布をまとい、身の丈四メートルはあろうかという巨体。そしてその頂点には、鋭くそびえ立つ二本の角。まぎれもなく、鬼である。 しかし、もちろんそんな存在を認められるはずがなく、男は絶望した。とうとう、自分がいかれてしまったのだ、と。 鬼は静かに腰を落とし、その巨体をぐっと屈めて男と目線を合わせると、意外にも穏やかな声で言った。 「どうも、突然の訪問失礼します。私、地獄から参りました」

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小説を読もう2025/05/27
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