あらすじ
都会の片隅、
喧騒の路地裏にひっそりと佇むバーがある。
その名は「星影」。
明るくもなく、目立つでもない。
けれど、その静けさが
夜の疲れた心にはちょうどいい。
木製のドアをくぐると
カウンターの向こうに寡黙なマスター
店内には心地よいジャズが流れている。
けれど、この店の本当の秘密は——その奥。
レースのカーテンで仕切られた、半畳ほどの空間にある。
そこに、まるで異世界のように灯るランプと
並べられたタロット、人相、手相、水晶球。
そしてそこに座っているのは、
月乃(つきの)先生という名の初老の女性。
銀の髪に柔らかい微笑み、
古風な着物にエプロン。
人々は親しみを込めて
彼女を“月先生”と呼ぶ。
その占いの館に入るには、ある合言葉が必要だ。
「月が見てる」
誰が広めたのかも定かではない。
けれど、その言葉を知る者だけが
この店の“もうひとつの扉”を開けられる。