あらすじ

『解離性同一性障害の彼女【紬】の中にいる人格【紗月】と彼氏の【透】が叶わぬ恋に落ちる話』 透(とおる)には恋人がいる。名前は紬(つむぎ)。 どこか儚く、感情を表に出すのが苦手な彼女を、透は静かに、大切にしてきた。 しかし、ある日、紬の中から現れたもう一人の“人格”――紗月(さつき)という少女に、透は出会う。 紗月は、透に対して初めは距離を取りつつも、次第に自分という存在を確かめるように、透との時間を重ねていく。 そして透もまた、紗月の儚くもまっすぐな言葉に、心を揺らされていく。 紗月は“彼女”ではない。紬という本来の人格の中に生まれた、守るための存在にすぎない。 それでも、透と心を通わせるうちに、紗月の中には“個”としての想いが芽生えてしまう。 「わたしも、触れられたかった。愛されたかった」 姿も、かたちも、いつか消えてしまうかもしれない。 それでも、伝えたい言葉がある―― 「ここにいてもいい」と、誰かに言ってほしかった。 あたたかな手。 ふとした呼びかけ。 ほんの少しの優しさが、 心の奥の「存在したい」という想いを目覚めさせてしまう。 見つめられるたび、名前を呼ばれるたびに、 ここにいてもいいのかもしれないと、そう思ってしまう。 これは、“触れてはいけない”と知りながら、 それでも心がふれてしまったふたりの、静かな時間の物語。 ただ、そばにいたいだけ。 でもそれが、いちばんむずかしいことだった―― 感情は、ときにかたちを越えて届いてしまう。 これは“境界”の向こうで、確かにふれあった、ひとつの恋の話。

連載情報

ウェブ小説

配信言語
小説を読もう
小説を読もう2025/06/03
  • 現在の作品「この心は、誰のもの」