あらすじ
「『入るな』か……ふふっ」
夜、おれは町外れの古びたトンネルの前に立っていた。ネットで仕入れた情報によると、どうやらここは“出る”らしいのだ。
人けはまったくなく、昼間ですら誰も通らないのかもしれない。まだ入り口だというのに、空気はじめじめと重く、どこか黴臭い。雨が降ったわけでもないのに、アスファルトにはところどころ水たまりができていた。
照明は入り口近くに立つ外灯が一つだけ。その頼りない明かりが、壁にびっしりと書かれた落書きを薄く浮かび上がらせていた。
【入るな】
【危険】
【ここに近づくな】
おれはスマートフォンのライトをつけ、壁を照らしながら、ゆっくりと足を踏み入れた。