あらすじ
ポチは生後5か月目の子犬である。
水戸家を訪れる人たちは、ポチという名を訊いただけで、「え! 犬を飼っているの」と、決まって必ず言い、ポチを抱き上げては、ポチの股間をじぃーとみたり、ポチの顔に頬ずりをするのである。
なんで、そんなことをするのだろう。はっきり言って«大迷惑»なのである。
ポチにとって、ただただ煩わしいだけなのだが、人というものは犬の迷惑なんて顧みない。
そんなわけで、ポチは「ワン」と吠えて抗議をしてみるが、その「ワン」という吠え方も可愛いといって、今度は頭を撫でてくるのである。
ポチは、そんな奴らを本気になって相手にしても仕方がねえやと、我慢しているが、たまに我慢できなくなることがある。そんな時は水戸家の人たちをからかうことにしている。飼い主家族をいじって憂さをはらしているのだ。
ポチを飼っている水戸家は四人家族である。
大黒柱は、水戸源吾さんと言って今年43歳になる男である。頑固で融通が利かず、時々、ポチを空に放り投げて遊んでいるとっても嫌な奴だ。けれど、こんな男にもりっぱな奥さんがいる。源さんには「さくら」さんという美しい伴侶がいて、ポチにいつも美味しいものをくれる、とても美味しい……失礼、優しい人なのである。源さんとさくらさんの子供は二人いて、愛ちゃんは中学二年生の女の子、大くんは小学三年生の男の子だ。愛ちゃんは、食いしん坊で元気溌剌のおませな女の子である。大くんは、ちょっと気が弱いが正義感が強い男の子だ。
頑固で融通が利かない源さん、綺麗で優しいさくらさん、食いしん坊で元気溌剌でおませな愛ちゃん、ちょっと気が弱いが正義感が強い大くん。
ポチは、この四人と暮らしている。
平々凡々の日々を送っていると言いたいところだが、なぜか、ポチの周りでは騒動が起きる。
この日も……。