あらすじ
「ねえパパ、女の人とはもう話しちゃダメだよ?」
その忠告は、十歳の娘からだった。でも僕は頷かなかった。だって、どうなるか見たかったから。
男女比1:10。
男が希少種となった社会で、高校の養護教論として働く白井優弥(25)は、姉の死を機にその娘・アイラを引き取った。
静かに暮らすつもりだった。けれど、周囲の女性たちが不穏な動きをしている。
彼の優しさと父性に触れた瞬間、心の中で恋に堕ち、そして狂い始める。
優弥には、そんな好意の芽生えだけが聞こえる超能力があった。
「また、ひとり、堕ちちゃったたかな?」
感情のさざ波が耳元で囁くたび、彼は静かに紅茶をすする。
制御不能な感情が爆ぜる女たちを前に、彼はただ、観察を楽しむ。
恋に落ちた旧友が、職場で他の女にナイフを向けた。
隣人が、飼い猫を交換条件にアイラを脅した。
養護教諭が、家の周りに監視カメラを設置していた。
でも、怒りはしない。引かない。拒絶もしない。
ただ、面白がって見ている。
唯一、彼が本気で守るのは、世界最強のサイキックであり、彼を独占したい娘・アイラだけ。
「パパに触れていいのは、わたしだけです」
彼女の力が炸裂するたび、街のどこかが壊れる。誰かの記憶が消える。
それでも優弥は微笑む。
「やりすぎだよ、アイラ」
そう言いつつ、どこか嬉しそうに。
これは、歪んだ愛と他人の執着を燃料にして、心の平穏を楽しむ性格破綻者の物語。
「俺は、誰も壊してない。ただ壊れるのを見てるだけだよ?」
人間の心が可視化される世界で、一番“悪い”のは誰なのか。
すべてを理解しながら、何もしない優しさが一番残酷だと知る物語、ここに開幕。