あらすじ

彼女は脚を開いた。彼は手を引いた。 埃の粒が光の中に漂い、ページをめくる音だけの静謐。 十八歳の僕と梨花は、思考よりも早く、指先の温度で互いを知った。 誰にも聞かれない机の下、制服越しの接触。 梨花の沈黙は拒絶ではなかった。 震えるまなざしが「……この気持ち、何なの?」と 問いかけていた── 彼女は一人で「女」になった。 誰にも知られず、自らの肉体と対話するように。 僕は心の空白に彼女の名を幾度も書きつけ、そして消した。 言葉を交わさぬまま、少女と少年はすれ違った。 あの一瞬だけが、ふたりの記憶に焼き付いたまま。 好き、と言うのは何かが違う。 欲しい、と言えば軽すぎる。 守りたい、と言えば──笑うしかない。 名もなき感情が、名前を得ることなく続いていく。 詠出 歩詩乃

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小説を読もう2025/05/03
  • 現在の作品図書館の指先~十八歳の夏、机の下で触れた、恋より早く。二人の片思い。彼女は脚を開かなかった~