あらすじ
男爵令嬢のクロエは婚約者のラインハルト皇太子を溺愛していたが、彼は王女に夢中で誕生日パーティーの席で婚約破棄をクロエに言い放つ。
絶望したクロエは塔の屋上から飛び降りようとするが、その瞬間に前世の記憶が蘇り、この世界が前世でプレイ乙女ゲームの世界であることと、自分が悪役令嬢クロエであることを思い出す。
「待って、私……これ、知ってる」
クロエは手すりにかけていた足を止めた。あの塔の上から見下ろす景色、ラインハルトの冷たい目、それを見て絶望に沈む自分。すべてが――既視感。
そう、これは前世でプレイしていた乙女ゲーム『王冠と茨のロマンス』の一場面だった。自分はその中で悪役令嬢クロエとして登場し、ヒロインである王女をいじめた末に破滅する運命だったのだ。
「思い出した……私、ヒロインじゃなくて、“あの”クロエだったのね」
震える手で手すりから身を引いたクロエの目には、これまで見えなかった“選択肢”が浮かび上がっていたような気がした。
(じゃあ、破滅する未来は回避できる?)
心に火が灯った。もう、ラインハルトにすがる必要なんてない。ゲームのストーリーを知っているのなら、そこから外れればいいだけだ。
「悪役? 上等よ。なら、私は自分の力で幸せを掴んでみせる!」
こうしてクロエは、運命に抗う決意を胸に新たな一歩を踏み出した。