あらすじ
1886年、アトランタ。
かつて戦争の炎に包まれたこの街は、今や金と薬で輝いていた。
街中の新聞はインチキ薬の広告で埋め尽くされ、「奇跡の万能薬」の見出しが躍る。
人々は痛みを忘れたがっていた——戦争の傷、貧困の苦しみ、生きることそのものの疲れを。
ジョン・ペンバートンは、暗い研究室で新たな調合を試みていた。
かつて南軍の軍医だった彼は、戦場での負傷をきっかけに薬剤師の道を選んだ。
しかし、薬の世界はすでに金儲け主義に染まり切っていた。
「本当に人を癒す薬が作りたい……」
そう思っていたはずなのに、いつの間にか彼もこの街の風潮に飲み込まれていた。
売れる薬を作るための調合、広告のための誇張……それが現実だった。
だが、彼の老いた身体が警鐘を鳴らし始めていた。
「俺の時間は、もう長くない……」
ならば、最後に何を作るべきか?
人々が本当に求めるものとは何か?
そんな思いに突き動かされるように、彼は試験管を握りしめた。
甘く、刺激的で、疲れを忘れさせる飲み物。
しかし、それは単なる薬ではなく——
コカ・コーラ という名の、時代を変える一滴となるはずだった。