あらすじ

鍛治狂い――村瀬宗兵衛と呼ばれるその男は、尾張の片隅に炉を構え、人の依頼ではなく、自らの欲に従って刀を打ち続けていた。時は応仁の乱が終わり、諸国が割れ始める戦国前夜。将軍家は名ばかりとなり、有力大名もまだ確固たる権威を持たぬ混迷の時代。刀の需要は急増していた。

宗兵衛は領主にも侍にも頭を下げず、ただ「良い素材」と「使い手の技量」だけを見て刀を渡した。敵味方を選ばず、報酬にも興味を示さず、「この刀がどれだけ血を吸い、技を受け止めるか」にしか関心がなかった。

腕の立つ剣士ほど宗兵衛の刃を求めた。やがて、彼の刀をめぐって戦が動く。宗兵衛の作は、一度手にすれば離せぬ“業物”となり、持ち主が倒れれば、また別の強者の手に渡る。その刀が戦場を渡り歩くたび、宗兵衛は鍛冶場に戻り、記録帳にだけ言葉を刻む。

「また一振り、近づいた」
究極の一振りを求め、血と鉄を喰らいながら宗兵衛は今日も炉に火を入れる。そこに正義も忠義もない。ただ、斬るための刀だけが存在する。

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アルファポリス
アルファポリス2025/05/17
  • 現在の作品鍛治狂い・村瀬宗兵衛――敵味方を選ばず刀を打つ異端の鍛冶師が、戦乱の時代に“究極の一振り”を求めて火花を散らす、信念なき刃と狂気の鉄火時