あらすじ

早川直人は、地味でうだつの上がらない少年だ。お洒落はしないし、髪はボサボサ、眼鏡だし、部活もなにもやっていない。コスプレイヤー専門の動画投稿サイト《COS.site》にハマっているが、そこで活躍するレイヤーを見ているだけで、本人はコスプレをやるなど考えたこともない。だがある日、クラスメイトの会津美紫檀に動画投稿のカメラマンとして誘われる。紫檀は直人とは正反対の、明るく爽やかな人間で、《月破》というコスプレで実際に投稿者になろうとしていた。若干の嫉妬を感じつつ、直人はカメラマンとして紫檀について行く。やがて、直人は紫檀が秘めていた「ある計画」を知ることになる──  二年前、紫檀は家庭内暴力を振るう父を殺す計画を立てたことがあった。しかし、紫檀の兄・竜舌蘭がそれを阻止するため、代わりに父を半殺しにした。その時、竜舌蘭が自分を押し殺すため《メルキッド仮面》という衣装をまとった。この事件がきっかけで、竜舌蘭は心に深い傷を追い、元は明るい性格だったはずが、私刑を行うコスプレイヤーに変わってしまった。紫檀はそれついて「兄は善人だから罪が薄れることを恐れている。怪人になろうとしている」と解釈した。紫檀が《月破》に変身するのは、ヒーローとして《メルキッド仮面》の概念を倒すことで兄の心を開放する、いわば儀式を行うためだったのだ。  本当の紫檀は、直人以上に人付き合いが苦手な人間で、その劣等感から変身願望をもつ内気な少年だった。それまで見せていた朗らかさは、兄の性格を模した《紫檀》というコスプレに過ぎない。そんな紫檀も、直人には友情というものを感じ始めて、本心を告げたのだった。  直人は、紫檀の計画を手伝うことにした。それは、うだつの上がらない直人にも紫檀と同じ変身願望があるからだ。その衝動こそが二人の友情だと無意識に感じていたから、一緒に活動してきた。二人は《メルキッド仮面》を探しだし、戦いの儀式「ウルトラ・コスプレイ・ファイト」を挑む。その戦いは、二人で《月破》に新設した「内蔵式・月破ァ・キック」によって勝利を収めた。  しかし、儀式が終われば《月破》というヒーローは存在意義がなくなってしまう。使命を終えた紫檀は《紫檀》というコスプレも失った。何者でもなくなった彼は、これを最後に行方をくらませてしまった。  これが十一年前の話だ。現在、大人になった直人はコスプレイヤー《餡饅マン》として活動している。その直人は、ボランティア活動の帰り道、ある伝手で《真・月破》と鉢合わせた。実はこの物語はある小説家の取材という形式で綴られており、その縁によって二人はやっと再会を遂げる。  直人は彼に告げる。「君は僕にとって太陽だった。君は空っぽなんかじゃない」。直人は紫檀の心を開放するため、最後の「ウルトラ・コスプレイ・ファイト」をはじめた。

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カクヨム
カクヨム2025/04/06
  • 現在の作品ウルトラ・コスプレイ・ファイト