あらすじ
桶狭間前夜。今川家の人質として駿府に暮らす若き松平元康(後の徳川家康)は、退屈な日々の中、遠い海からやってくる異国の商船に憧れを抱いていた。ある日、織田家への内通を疑われ、絶体絶命の窮地に陥った彼は、間一髪のところで南蛮商人ルイスに拾われる。
「イエヤス、お前には海の匂いがする」
そう呼ばれた元康は、ルイスの交易船に乗り込み、見たこともない世界へと船出する。異国の言葉、奇妙な習慣、そして利をもって世界を繋ぐ「商」の力――戦しか知らなかった若き武士は、香辛料の香り漂う船上で、硝石の価値を知り、世界の広さに目を瞠る。明、呂宋…活気あふれる市場で民の営みを目の当たりにし、ルイスから「商は国境を越える。戦よりも遠くへ行ける」という言葉を授かる。
だが、海の旅は常に平穏ではない。海賊の襲撃、嵐との格闘…その中で元康は、武士としての経験と商人としての知恵を融合させ、新たな才能を開花させていく。莫大な富を約束されながらも、彼は故郷三河への帰還を決意する。ルイスから贈られたのは、遥か南蛮の羅針盤。「再び海へ戻れ」、その言葉を胸に、元康は戦国の世へと戻る。
商人経験を血肉とした家康は、いかにして激動の乱世を生き抜き、天下人への道を駆け上がったのか?そして、彼が興した朱印船貿易に込められた、海の上の誓いとは?
これは、歴史の裏に隠された、若き日の家康の知られざる冒険譚。一介の武士から天下人へ、そして海の向こうへと繋がる壮大な物語が、今、始まる。