あらすじ
わたくしの名は、エリス・フォン・グリムヴァルト。貴族としての礼儀作法よりも、魔力演算式と魔導理論が似合う超絶技巧の開発者。そんなわたくしが、ある日“辺境左遷”という処分を受けましたの。理由? 上層部がわたくしの技術を理解できなかった、それだけのことでしてよ。
けれど、辺境とは実験天国。規制も監視も干渉もございませんわ。思う存分、わたくし好みの街を創り、技術を育て、好きなだけ世界をいじって遊べる、夢の楽園ですわね。
まずは村の衛生環境を、魔導濾過装置と抗菌水循環網で劇的改善。荒れた畑は魔導触媒と自動播種機で肥沃な楽園に早変わり。民たちはわたくしの魔具に目を丸くして跪き、ついには「神の使い」などと呼び始めましたけれど――ふふ、違いますわ。“神”ではなく、“革命者”ですのよ。
そんな中、わたくしは村外れに埋もれていた古代文明《ゼクト=ノヴァ》の遺跡から、完全動作可能な《自己成長型魔具中枢核》を発見。その制御権を得た瞬間、わたくしは“古代の軍事資産”すべてを味方につけたのでしてよ。
それらを活用して辺境都市《アウローラ》を建設。自律防衛魔導兵器による治安維持、魔素供給網による生活インフラの整備、技術育成機関の創設と教育改革……王都が数百年かけても成し得なかった文明水準を、わたくしはたった数ヶ月で実現してしまいましたの。
当然、王都は混乱いたしましたわ。
「違法魔具」「未確認技術」「危険思想」――まあ、嫉妬と恐怖が入り混じった三文芝居を並べて、わたくしを王都に召喚したのですもの。ですが、わたくしは正々堂々と“発表会”を開いて差し上げましたわ。誰にも再現できない魔具をその場で組み立て、技術庁の次官をして拍手喝采させたとき、彼らはようやく気づいたのですわ。
「この女は、もはや王都では制御できない」と。
でも、わたくしにとっては当然のこと。だって、技術とは制御されるものではなく、自由のためにあるものですもの。
そうして自由を謳歌していたわたくしのもとに、次なる波が押し寄せましたの。
“未来を正す”と称する謎の時空組織《クロノス機関》。彼らはわたくしの行動が因果律を逸脱し、世界線を歪めていると断じ、抹消対象として強制介入を開始。時空間跳躍、時間切断、存在位相の書き換え――そのすべてが、わたくしに通じるとでも思いまして?
わたくしが開発した魔導理論は、彼らの想定の遥か先を行っておりますわ。たとえ“神格存在”を名乗る存在が降臨してきたとしても、それがどうしたというのかしら?ならば、“存在そのもの”を消し去って差し上げますわ。わたくしの魔具は、概念すら否定しますもの。
――これは、ひとりの宮廷令嬢が、技術と魔導で世界の常識を塗り替える物語。
ん?恋愛? そのうち、面白ければ考えて差し上げますわ。
その前にまずは、“未来”を再設計いたしましょうか。
世界よ、わたくしの好奇心に耐えられまして?