あらすじ
霧に閉ざされた街、ラセルド。
パン屋の娘・ミリアの店には、夜になると決まって一人の客が現れる。
重たい鎧をまとい、首のないその騎士は、言葉を発することなく、ただ静かにパンを買っていく。
名前も、声も、顔も知らない彼に、ミリアはどこか懐かしさを覚えるようになる。
——この人を、私は知っている気がする。
やがて明らかになる、街の正体と少女の記憶。
これは、名前を忘れた娘と、声を失った騎士が、
ふたたび「互いを見つける」までの、小さくて深い、霧の中の恋の話。
静かに始まり、静かに泣ける、幻想的な短編ファンタジー。