あらすじ
女性下着メーカー「エフェメール」に入社してもうすぐ三年目。佐伯優斗は、そろそろ仕事にも慣れ、後輩の指導も任されるようになっていた。
だが、その日、部長の真顔がすべてを変えた。
「佐伯くん。明日から、女装して出社してもらう」
一瞬、意味が理解できなかった。会議室に響いたのは、椅子の軋む音だけ。優斗は笑ってごまかそうとしたが、部長の目は本気だった。
「……部長、それは、何かの冗談ですか?」
「冗談じゃない。うちの製品は、"女性の感性"に寄り添うことが最大の武器だ。だから、現場レベルでの"着用体験"が必要なんだ。佐伯くん、君は営業で女性向け新ブランド『リュミエール』を担当しているよね?」
優斗はうなずく。新ブランドの企画会議でも彼の提案は評価されていた。
「だったら、その製品を本当に理解するために、"女性として"一週間出勤してみてほしいんだ」
「……女装して、ですか」
「そう。スカートも、ブラも。ヘアメイクはこの資料を参考に。明日から“佐伯ゆう”として出勤してくれ。協力してくれる社員はいる。市川と沙織にも話は通してある」
机の上に置かれた資料の中には、コーディネートされた女性用スーツ、下着の着こなし、ナチュラルメイクの手順……そして「ゆう」と記された仮IDカード。
優斗は唇を引き結んだ。逃げたい。だが、自分がこのブランドに懸けてきた情熱は、そんな羞恥心を上回っていた。
「……わかりました。明日から、ゆうとして出社します」
部長は満足そうにうなずいた。
「いい決断だ。女性の目線に立った営業マンとして、必ず成長できるはずだ」
こうして、優斗の“女としての出勤生活”が始まる。
戸惑いと羞恥、そして奇妙な心地よさのなかで——。