あらすじ

春の風が病院の中庭を通り抜けるころ、看護専門学校三年の早川 悠真は、実習先の総合病院の控室で呆然としていた。

「えっと……これが、僕の?」

手元に渡された実習用の制服は、どう見ても女性用。淡いピンクのチュニックと、白いスカート。そして、一緒に配られたのはレースの入ったキャミソールと、白いストッキング、ぺたんこのナースシューズ。

「申し訳ないんだけど、男子用は発注してないのよ。前にも男の子いたけど、みんなこれで乗り切ってもらったの」

担当教員の言葉に、悠真は言葉を失った。

(冗談だろ……?)

しかし、実習は翌日から始まる。病院内での服装規定は厳しく、下着も透け防止の白、指定品以外は不可。選択肢はなかった。

そして、実習初日。鏡の前に立った悠真は、自分が別人のように見えた。スカートの裾がふくらはぎにふわりと触れ、ストッキング越しの脚が妙に意識される。

(これで病棟に行くのか……)

しかし、患者たちは驚く様子もなく「ナースさん」と彼に微笑む。最初こそぎこちなかった歩き方も、数日もすれば自然と腰を落とし、膝をそろえて立つようになった。

「早川さん、最近所作が綺麗になったね」

指導ナースのその言葉に、悠真の胸の奥がかすかに波打つ。

(僕は、なんで……少し、嬉しいんだろう)

——女性用のナース服に包まれた一カ月の実習は、ただの訓練ではなく、彼の中に眠る何かを目覚めさせていく時間になっていく。

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アルファポリス
アルファポリス2025/05/10
  • 現在の作品ナース服の中の僕