あらすじ
マリアは母エヴァとの母子家庭であった。エヴァはヨセフと再婚し、五才のマリアは山小屋で幸せな家族暮らしをしていた。
ある日、エヴァの元に再婚前の住所へ帰れと報せが来る。嫌々ながらも彼女は断れず、ヨセフとマリアを連れて一時的に引っ越しをする。しかしそこにあったのは家族に対して否定的な環境であった。
女性は女らしく、男性は男らしく、古く固執的な形を強要する町人たち。幼いマリアはもちろん、初めてそこを目にするヨセフも戸惑いを隠せない。ただエヴァだけは何かに怯えていた。それは元夫アダムの存在であった。
アダムの異常な性癖、趣味、言動。それらすべてがエヴァを怯えさせていた。幼い頃から婚約するまで一緒だったエヴァにはアダムの変貌が思春期であったと言い切れないものがあったのだ。そして、アダムはマリアと血の繋がった正真正銘の父親でもあった。
アダムはその町から出ることなく生きてきた。それはエヴァと婚約し離婚しても変わらなかった。エヴァたちの引っ越し先にはアダムがいたのだ。
聖書の中の話であればアダムはエヴァと夫婦となったであろう。ではなぜ二人は離婚したのか。エヴァがマリアを身籠ったのと同時期に別の女性がアダムの子を身籠っていた。アダムは浮気をしていたのだ。それを知ったエヴァは当然裏切られたと思い、離婚を切り出した。マリアと腹違いの子はアリスである。
マリアはそんなことも知らずにアリスと出会う。好印象だったはずの互いへの想いは次第に悪い方へと向かい、マリアとアリスも友人としてさえうまくいかなかった。
そんな中で流れるとある家の話が舞台である。地元のお化け屋敷と言っていい無人の屋敷には、いないはずの人影が窓から見える。動く人形がその家には住んでいる。裏庭は迷路である。様々な噂が町の中を流れている。その家が呪われているとさえ言われている。
マリアたちは何故かそんな家の管理を目的に呼び戻されていた。引っ越し先とはその呪われている家であったのだ。そんな家に住むマリアたちを町の人は嗤っていた。
次第にその家の中は外とは違う世界となっていく。噂は現実となり、まるで絵本の中にいるようである。しかしそのどれもが明るいものではない。その家は確かに呪われていたのだ。
動く人形ナターシャを主とした異常な現象たち。エヴァはそれを知っていた。町の子供は誰もが呪われた家に興味を持ち、忍び込んでは裏庭の小屋でいかがわしい遊びを繰り返していた。大人たちはそれを知りながらも見過ごしていた。
やがてヨセフが消え、次いでエヴァと飼い犬が消えた。一人になったマリアは家から出ようとナターシャらの協力を得る。
進むごとに見えてくる家の呪いと過去。そこに見え隠れする男の影。ナターシャによって語られる真実。不完全な呪い。
最後の生け贄は少女にこう言った。
「次はあなただ」
マリアは家から逃げ出した。
呪いは完成され、未来のマリアに降りかかった。
最初に呪われたのは誰だったのだろうか。その答えを知る者は既にいなかった。