あらすじ
世界には時間がない第1巻:
彼女は立ち上がる。足は震えているが、意志は揺るがない。彼女は自分が何をしてしまったのか、何に巻き込まれてしまったのか、まったく理解していない。だが、あの少女を見捨ててはおけない。
彼女はハッチを閉める。土を被せる。痕跡を消し去ろうとする。だが、知っている。それは無駄なことだ。時間は彼女の敵だ。そして、あの場所は時間から隔絶されているのかもしれない。
彼女は森をさまよい始める。先程とは違う。あの暗闇を経験する前と後では、同じ景色も別のものに見える。木々は高くそびえ立ち、見守っているようだ。風のざわめきは、囁き声のように聞こえる。
彼女はコンパスを見る。針は相変わらず狂ったように回転している。しかし、今や彼女はそれに気づいていない。羅針盤は外ではなく、内にある。
彼女はあの部屋のシンボルを思い出す。奇妙な角度。未知の幾何学。それは記憶ではなく、身体に刻まれたタトゥーのように、彼女の意識にこびりついている。
彼女は立ち止まる。突然の啓示だ。
「振動だ」彼女は言う。
あのシンボルは、エネルギーを共鳴させるためのキーだったのだ。あの粘液状の触手を呼び出すための、そして、水晶の力を発動させるための。
彼女は再び歩き出す。今度は、目的地がある。ランダムではない。彼女は、自分がどこへ向かっているのか知っている。