あらすじ
魔物の住む異界と、人の暮らす人間界。二つの世界を繋ぐ扉は、新月の夜に一斉に開かれる。
アリシアの父セドリックは、魔物が落とす魔晶石を識別し、武器や道具を作ることのできる、その界隈では有名な腕利きの職人だ。そのセドリックが、ある新月の夜に失踪した。
セドリックが失踪したのが新月の夜だったため、アリシアは父が異界へ迷い込んでいるのかもしれないと推測して、執事兼幼なじみのノクスには内緒でゴーストハンターの真似事をはじめることに。もしもセドリックが異界へいるならば、魔物からの何かしらの情報が得られるかもしれないという思いからだった。
ある夜、一人で向かった墓地でスケルトンとマンドラゴラに出会う。それを皮切りに、アリシアの周りにはウィル・オ・ザ・ウィスプや猫の王ケット・シーまでもが集まるように。当然ノクスはそれをよく思わず、魔物は魔物、人と相容れることはないとアリシアに釘を刺す。
そんなある日、顔馴染みのハンター、フレッドがピンチに陥っていることを知るアリシア。無理を言ってノクスと共に現場に駆け付けた先で、アリシア自身がワーウルフに攫われてしまった。危機一髪のところでノクスに救い出されたが、その時ワーウルフはアリシアを見て「薔薇の花嫁」と呟いて絶命した。
薔薇の花嫁は数百年に一度生まれるか生まれないかという、ヴァンパイアにとって貴重な血を持つ乙女のことだ。その血を飲めば、軽く数百年は異界の王に君臨することができる。そしてセドリックはアリシアをヴァンパイアから守るために、魔物を操ることのできる支配の指輪を作ろうとしていたのだと、ノクスは語った。
自身が狙われる対象だと知ったアリシアは、屋敷に大人しく篭もるようになる。代わりに異界へいるであろうセドリックの情報集めにはノクスとフレッドが協力しておこなった。そしてついに手にした情報で、ノクスはフレッドと共に夢魔退治へと向かう。しかし逆にアリシアの居場所を知られてしまい、ノクスは自分がずっとひた隠しにしてきた力を解放してアリシアを救出する。ノクスはヴァンパイアと人間の間に生まれたダンピールだった。
幼い頃、異界で監禁、拷問されてきたノクスは、必死に逃げた先でセドリックに拾われた過去がある。正体を知られてもなお家族として迎え入れてくれたセドリックには返しきれない恩があり、そしてアリシアには正体を知られたくないほど強く思いを募らせてきた。
けれど夢魔の一件でフレッドにも正体を知られ、ここにはもういられないとアリシアにも秘密を晒して姿を消してしまう。
ノクスが去ってしまって落ち込んでいたアリシアを励ましたのは小さな友人の魔物たちだ。彼らと、そしてフレッドも一緒になって、ノクスを連れ戻そうと決意するアリシア。そして次の新月の夜。ノクスを探す前に、なぜか屋敷にはセドリックが気を失った状態で戻ってきたのである。
目を覚ましたセドリックは、自身がヴァンパイアと取引をして城に軟禁されていたことを語る。そしてノクスはセドリックを解放する条件として、自分がヴァンパイアの城へ戻ることを要求されたのだと推測した。ヴァンパイアは血統をより重視する一族だ。ダンピールであるノクスの存在は、生まれた時から忌むべき存在なのだ。
セドリックも加わり、アリシアは次の新月にノクスを必ず救い出すと決意する。
完成した支配の指輪も持って、アリシアたちは皆揃ってノクスを迎えに異界へと渡った。
ヴァンパイアの城でようやく会えたノクスは、全身傷だらけだった。ノクスをそんな状態にしたのはこの城の主。彼は何とノクスの叔父だった。ヴァンパイアの中でも地位がある故に、ノクスの出自について異様なまでに嫌悪していたのだ。
そんな男の元からアリシアはノクスを無事連れ戻すことに成功する。支配の指輪で自分たちのことを忘れるようにとも命令をしたので、彼がアリシアたちを追って来ることはない。アリシアはやっとノクスに思いを伝え、ノクスもようやく自分の存在を認めることができたのだった。
その後、無事に人間界へ戻って来たアリシアたち。いつもと同じ日常がはじまる。セドリックは滞っていた仕事を再開し、小さな魔物たちもすっかり屋敷に居着いている。ノクスも執事として普段通り働いているが、唯一変わったことといえばアリシアとの関係だ。
ノクスはダンピールである自分を認め、そんな自分を変わらず家族だと言ってくれるセドリックに、今度は自分から懇願する。自分を本当の家族にして欲しいと。
種族は違えど、人と魔物は友人にも、そして家族にもなれる。
ダンピールであるノクスの隣には、今までも、そしてこれから先もずっと、人間のアリシアが寄り添っている。