あらすじ
大口真神(おおくちのまかみ)、ニホンオオカミが神格化された「おいぬさま」を祀る小さな社を守ってきた咲良の生家。
咲良は都会で働いていたが、仕事にも疲弊し、病気の父親の介護のため地元に帰ってきた。
介護していた父親が亡くなったのちのある日、買い物帰りにおいぬさまにお供えをしようと鳥居をくぐると、不思議な世界、隠り世(かくりよ)に迷い込んでしまう。
目の前にあったのは立派な旅館で、そこは咲良の家が大事にしていた社の主であるおいぬさま、昴(すばる)の経営するあやかしや神々、その使いが湯治にくる温泉宿だった。
なんとか現世に帰りたい咲良だが、上位の神使や神の協力がないと現世には帰れないらしい。
山犬の大将と呼ばれ、神のお使いたちからも一目置かれるオオカミの神さま、「おいぬさま」である昴であったが、宿の経営はからっきし。今隠り世では洋風の食事が流行りで昴自身もワインが大好きらしいが厨房担当共々、それを全く活かせていない。
昴が協力してくれれば簡単ではないにせよ帰れるらしいが、昴は人間嫌いらしい。
バレたらタダでは済まないが、代々お社を守ってきた家の最後の娘ということで、宿の従業員たちが匿ってくれ、硫黄泉で匂いを消し、彼女は現世育ちの山犬という設定で宿で働きはじめた。
ホテルのレストランで働いていた咲良は、厨房に出入りをし、まずは賄いなどの身内向けの食事担当となり、徐々に宿の食事や合わせる酒のアドバイスし、旅館の食事の改善にかかる。
経営を立て直し、昴の印象をよくし、その後、人であることを明かし帰れるようにと皆が画策してくれたのだ。
実は咲良の正体がとっくに昴にバレていることなどつゆ知らず……
様々なトラブルを乗り越えて種を超えた絆を結び始める「正体を隠したままの咲良」と「知らぬ存ぜぬを通す昴」だが、隠り世に迷い込んだ人間を排除する役目を担う、八咫烏や鹿、鶏の集団「狩人」に咲良の存在がリークされてしまう。
昴は咄嗟に「人であるが、彼女とはいずれ所帯を持つ予定だ、狩りの対象にしないでほしい」と嘘をつき……
ふたりの「嘘」から、人である咲良とオオカミの神さまである昴の恋の物語がはじまる。
※実在の施設や出来事とは関係ありません、フィクションとしてお楽しみください。