あらすじ
広大なダイソン球体「ノヴァスフィア」の一区画、永遠の冬が続くウィンターヘイブン。そこで目を覚ましたのは、長い耳と白い体毛を持つ「ラゴモーフ」と呼ばれる遺伝子融合型の兎のような姿をした青年ユナギ。
彼の記憶は曖昧で、データベースにも存在しない「存在しない兎」。唯一確かなのは、700年以上前の地球で暮らしていた「加藤雪」という前世の記憶だけ。
警察機能を持つPMNロボットに保護され、「特例市民」として暫定IDを与えられたユナギは、この未知の世界で生きる術を模索し始める。
様々な支援に助けられながら、トランジット・レジデンスと呼ばれるホテルに滞在し、AIパートナー「アルク」と出会う。少年のような外見ながら古風な話し方をするアルクは、ユナギの自立を尊重しつつ優しく寄り添う。
二人は街を探索し、ノヴァスフィアの不思議な光景に驚きながら、徐々に生活の基盤を固めていく。球体内部の湾曲した景色に「空に浮かぶ都市」が見える光学現象、量子エンタングル・ネットワークで繋がれたAI社会、植物育成が義務付けられた環境政策…。
ユナギが耳をピクピクと動かしながら好奇心いっぱいに新しい発見をする姿に、周囲の人々も温かなまなざしを向ける。時に大きく跳ねる耳が感情をストレートに表現する愛らしい彼の存在は、どこか特別な輝きを放っていた。
やがて自分の居場所と可能性を探るため、ユナギは適性検査を受けることを決意する。この遥か未来の世界で、彼はどんな冒険を繰り広げるのか。そして「前世の記憶」の謎は解き明かされるのか。
永遠の冬の街で、小さな白いラゴモーフの新しい人生の物語が始まる。