あらすじ

古来より、空間の裂け目からこの世に入り込んだ異形の者をあちら側へと送り還し、綻びた空間を繕い閉じる役目を担う「繕い屋」の一族がいる。 繕い屋の一族に生まれた縫目綴は大学卒業後、両親の元で繕い稼業の手伝いをしている。一族の掟により、繕い屋は添い遂げる相手と二人ひと組の「双」となることではじめて独り立ちを許され、また異形の者と契約を交わすことで男でも子どもを身ごもることができることから、結婚相手は男女問わず、力の継承のため遠戚からふさわしい相手が選ばれる。綴も親戚筋である知花鷹弥との婚約を控えていた。 結納の着物の試着をした帰り道、綴は偶然、鷹弥が恋人と抱きあっているところを目撃してしまう。鷹弥は「人の執着しているものを奪いたくなる性質」で、四風谷家の次期当主である陸狼が子どものころから綴に執着しているのが、綴を結婚相手に選んだ決め手だと平然と告げ、鷹弥にほのかな憧れを抱いていた綴は衝撃を受ける。 陸狼は繕い屋本家の長男で、綴の四つ年下のはとこに当たる。親族の集まりで委縮していた綴のことをいつも気にかけて、なにかと世話を焼いてくれた幼なじみだ。思いがけず鷹弥にふられたことを告げると陸狼は自分のことのように怒り、次期当主であるおのれの立場を利用し、二人で偽装婚約をして結婚を破談にし、鷹弥に復讐しようと提案する。 陸狼の思惑どおり、大学卒業までという条件つきで偽装婚約をして「双」となった綴と陸狼は、繕い屋として二人ひと組で仕事をはじめることになる。 雨の降りやまない神社、大学構内に出没する吸血鬼、水音の鳴りやまない画家の家。二人が繕い屋として様々な案件に向き合うなかで、後味の悪い事件が起こってしまう。 自分のいたらなさに落ち込んで、繕い屋をやめようかとまで思い悩み引きこもってしまった綴は、陸狼に励まされたことで立ちなおる。事件のことで同じく傷つきながらも自分を支えようとする陸狼の優しさや強さを知った綴は、そのお返しに自分も陸狼のことを支えて一緒に生きていきたいとまで思うようになり、昔から世話を焼いてくれた陸狼への恋心をはじめて自覚する。二人の関係は偽物で、期限つきであることを寂しく思いつつも、いずれは陸狼を解放しなければと綴は秘めた思いを隠してしまう。 やがて夏の盛りに綴と陸狼は、人をさらって異空間に閉じ込める玉手の案件に当たることになり、玉手を追ううちに思いがけない異形の者と対峙することになる。 事件が収束すると綴は正直な思いを陸狼に伝え、正式に自分の伴侶になってほしいと申し出る。実は陸狼は子どものころから綴のことが好きで、偽装婚約のつもりが、その気持ちはずっと本物だったことが判明し、両思いとなった二人は正式な婚約者となる。

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カクヨム
カクヨム2025/03/24
  • 現在の作品うつしよの繕い屋