あらすじ
「他人は都合のいい道具じゃない」
家族からの虐待的環境から逃れるため、瀬島文は高校入学を機に下宿生活を始める。感情を持たないロボットになりたいと願う彼女だが、その本質は理不尽に対する怒りの塊だった。過去から目を背けようとする彼女の心は、いつも怒りと恐れの間で揺れ動いている。
下宿先「瓶内荘」で文は、感情を表に出さない謎めいた同室者・村尾蒔苗と出会う。互いに秘密を抱えた二人は、部屋の中央に衝立を立てて暮らし始める。村尾の「何も感じない」という特性と、文の「感じすぎてしまう」という性質は、対照的でありながら奇妙な共鳴を生み出していく。村尾はなぜか文の内面を見透かしたように接し、その不思議な洞察力は文を惹きつけていく。
学校「明哲高校」では、一人でボードゲーム同好会を続ける生沼先輩の存在が文の目に留まる。先輩が抱える困難に気づいた文は、「私が助けてもらえなかったように、先輩を見過ごすわけにはいかない」と心に決める。
同時に、明るい性格の同級生・小船井郁子の大切なぬいぐるみが突然紛失する事件や、特異な絵を描く堀江先輩の作品に隠された秘密など、様々な謎が文の前に立ちはだかる。
表面上は平穏に見える学園生活の裏に、文は権力構造と理不尽の影を見出していく。形だけの制度、責任から目を背ける大人たち、そして苦しむ生徒たち。静かな校舎の廊下には、誰にも聞こえない悲鳴が響いている。
自分の怒りに従って行動する文だが、その選択が本当に正しいのかという葛藤に直面する。村尾との対話を通じて、文は次第に自分自身と向き合い始める。感情を捨てたいと願った少女が、感情に従って行動することの矛盾との対峙。
ロボットになれなかった少女が、自らの傷を抱えながらも、学校に潜む闇との対決を選ぶ。 感情と理性、正義と不正義、加害と被害の境界が曖昧になる中でもがく青春ミステリー。