あらすじ
<あらすじ>
アベイル・エルニは悪役令息である。
第三騎士団に所属する騎士、カインは、ある日公爵令息であるアベイル・エルニの護衛の任務を命じられる。
アベイル・エルニはシルヴァリル王国第一王女である、エヴェリン王女の婚約者であった。しかし王女と親しくしている侯爵令息、フィリップを害そうとした罪により、婚約破棄され南方のカムセト領へ追放されることになっていた。
アベイルの護衛騎士となったカインは、カムセト領へと向かう途中で襲撃に合う。アベイルの命を狙った襲撃は王国の宰相であるアベイルの父の手によるもので、それを知りながら空虚に笑うアベイルに、カインは言いようのない不気味さを感じていた。
領地の経営に務めるアベイルは、その悪評とは裏腹に、真面目に民のことを考えているようにカインには見えた。その人と成りを知る内に、カインはアベイルに惹かれていく。それと同時に、自身を顧みることのない彼の性分に、酷く不安になるのだった。
かつて彼に放った言葉が胸を抉る。
――貴方を、軽蔑します。
その言葉を挽回すべく、カインはアベイルに惹かれるがままに彼に真摯に仕えていく。
アベイルの赴任したカムセト領は、困難の連続だった。
長い雨季により氾濫した河川が村を襲い、その後に流行した病により領民たちは不満を募らせていた。アベイルは必死に領地を良くしようとするも、追い打ちのように|魔獣の大暴走《スタンピード》が起き、アベイルは領地を追われてしまう。
アベイルと逃避行を続けるカインは、自身の実家であるローウェル領へと向かう。家族に温かく迎えられ、その間にあるアベイルを見て、カインは彼への想いを自覚していく。そして堪え切れずにその想いをアベイルに告げ、アベイルもまたそれを受け入れ、二人は肌を触れ合わせるのだった。
想いが通じたかに思われたが、アベイルはカインに残酷な命令を下す。
――もし僕の命が奪われそうになったら……君が、その手で僕を殺してくれ。
到底受け入れ難いその命令を、しかしカインは彼への思慕から受け入れる。
そしてその時は来る。襲撃者に命を奪われそうになったアベイルを、カインは自らの手で殺める。
暗転、酩酊、そして――
再び出会う彼らが紡いでいく、希望への物語。