あらすじ
研修医の一ノ瀬侑吾は、側から見れば順風満帆な人生を送っているように見える。だけど、好きなものと得意なものがことごとく一致しない性質の彼は、昔からあらゆることに妥協し続け、鬱憤を溜め込んでいた。親しい患者さんの死により精神の限界を迎えた侑吾は病院の屋上に向かい、そこで女子大生の有佐椿と出会う。彼女は歌を歌っていた。雪のように美しいその歌は、乾ききっていた侑吾の心を潤わせ、癒してくれた。
侑吾は椿に一目惚れし、その後、恋人同士になる。後で聞いたことによると、椿も侑吾に一目惚れしていたらしい。椿との恋は得意だ、と思う侑吾。初めて好きと得意が一致した侑吾は、絶対に椿を幸せにすると誓う。
歌の才能があり歌が大好きな椿の幸せは、その才能を突き詰め、歌で食べていくーー歌手になることではないか、と彼は思う。だけど椿は人前で歌を歌えない。
その理由を尋ね、数年前、椿の双子の弟である雪が「僕以外の前では歌わないで」と言い残して死んだことを知る。それと同時に椿の母親が、かつての国民的歌姫で、人を殺して自分も死んだ有名人、ジュンであったことも明らかになる。
また椿の複雑な事情に呆然としていたある日、親友の直樹との会話がきっかけで、自分の椿に対する感情が純粋な恋心なのかわからなくなる。
悩みに悩んだ侑吾はある休日、一人で近くの神社に向かう。そこで出会った不思議な少女から、「椿を幸せにするため、何でもできる力を与える」と告げられ、侑吾は「雪を助ける」という選択をする。雪が助かれば自分と椿は会うことがなく、間違いなく自分は不幸になる。それでも、椿の幸せを願おうと決め、侑吾は過去に向かい、雪を救う。
侑吾の奔走で助かった雪は、事故死した世界線では出会わなかった、母親の元恋人、志賀と出会い、自分と椿が思い悩んでいた母の真意を知る。また志賀は雪との関わりからジュンが犯した事件の真相を突き止める。
そして椿は侑吾が助けた雪、雪が生き延びたからこそ出会った志賀との日々の中で、自分の幸せのためにある決断をする。