あらすじ
恋愛が自由に許されなかった時代、私は一人の大学生に恋をした。
『一目惚れです。付き合ってください』
その人の名前は長谷川鏡弥と言って大学二年生、私・瀧本彩陽(さや)より五歳年上だった。
戸惑う私に、鏡弥さんは手紙でまず自分のことを知って欲しいと提案した。
綺麗な文字と楽しい文章、美しい挿絵に私はどんどん鏡弥さんに惹かれていった。
三ヶ月の文通を経て、私は鏡弥さんとの交際を始めた。
時代は終戦間近の昭和二十年、特攻に志願していた鏡弥さんにも、出撃命令が下ってしまった。
別れも言えないまま、愛する人を失った私に縁談が来る。
「はじめまして、田沢聡史です」
見合いの席に現れたのは、鏡弥さんによく似た男性で―――。
優しい聡史さんと、結婚することが決まった私は聡史さんから、衝撃の告白を受ける。それは、
『僕は田沢聡史ではありません』
というもの。
海岸で大怪我しているところを、鏡弥さんは亡き当主・田沢誠司に助けられた。
『亡き息子として生きてくれるなら、身元と生活を保証しよう』
記憶を失くした鏡弥さんに、選択肢はなく―――。
私は再び鏡弥さんに会えた喜びに、鏡弥さんを支えると誓った。