あらすじ
薄暗い部屋で鏡を覗き込むたび、“9回目”という赤黒い文字が浮かぶ奇妙な悪夢を繰り返し見る主人公。
何度も9回目に戻される矛盾の中で、鏡は歪み、椅子に絡みつく鎖や剥がれ落ちたポスターが不安を増幅させる。
白い部屋で無数の鏡が異なる姿を映し出す瞬間、主人公は自分が夢を見ているのか、それとも夢に見られているのかを疑い始める。
視界の端に広がる奇妙なイメージと、切れ切れに聞こえる残響が、現実と幻想を境目ごと融解し、読む者と読まれる者の立場をかき乱していく。
ページを閉じればすべては終わるかもしれないが、開き続ける限り、主人公と読者はいつまでも終わりなき9回目の夜に囚われ続ける。
さらに落ち続ける暗い穴の中では、宙を漂う数字や断片的な言葉が意識を揺さぶり、そっと囁く声が一歩踏み出すごとに背後を刺激する。
何度目の繰り返しか定かでないにもかかわらず、“9回目”という絶対的なフレーズが、この物語の起点と終点を支配しているのだ。