あらすじ

電車は、まだ来ない。 旅人は、日本海を望む小さな駅の待合室で時間を持て余していた。 壁際の古びた本棚に、背表紙の擦れた一冊の詩集がある。 なにか特別な気がして、旅人はそれを手に取った。 ページを開いた瞬間、一枚の手紙がふわりとこぼれ落ちる。 和紙のような紙は黄ばみ、折り目は薄く裂けかけていた。 ところどころインクが掠れ、いくつもの言葉が黒く塗りつぶされている。 手紙は、どこか遠くへ旅立ってしまった愛する人へ宛てたものだった。 満州の風景を感じさせる遠回しな言葉。 珈琲の香り、夕暮れの街角、秋の風の記憶。 そして最後の一文——それは滲んで読めなかった。 旅人は静かに手紙を戻し、ふと詩集の頁をめくる。 そこには、一篇の詩が書かれていた。 「たとえ遠くても、君の影はこの頁にいる。」 旅人は、詩集をそっと本棚に戻す。 夜の海は暗く、波は静かだった。 遠くで、電車の音が微かに響いた——。

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小説を読もう2025/03/15
  • 現在の作品波の間に間に