あらすじ
昭和二十四年、戦争の爪痕が残る日本で、雪乃は家族と幸せに暮らしていた。
優しい母・房絵、頼りになる父・権蔵、身体の弱い妹・美彩。家族の愛にあふれた柏木家に、一通の見合い話が届く。
『陸軍少佐 阪上大智』
雪乃より八つ上の大智には、ある噂があった。
それは、彼が子作りのために、結婚相手を探しているということ。
雪乃か、美彩。
どちらかを嫁に、阪上家の申し入れに雪乃は自ら嫁ぐと決意する。
輿入れの日、幸せを願う家族に見送られ、雪乃は阪上大智の暮らす別邸に向かう。
「ふつつか者ですが、よろしくお願い致します」
三指をついて挨拶する雪乃と対面した大智は『冷徹の美丈夫』の噂通りの、容姿端麗な美青年だった。
戦争で数々の軍功を挙げた大智は、二十四歳という若さで少佐に昇進した。
「たくさん、人を殺めただけだ」
立派なことじゃない、という大智に雪乃は深い心の傷を感じる。
少しでも癒してあげたい、雪乃は手作りの食事や小物で大智を癒やす。
大智は時折、雪乃を初めて見た日を思い出す。
心と身体に深い傷を負った大智は、病院で怪我人や病人の世話する奉仕活動に参加しており、大智も世話になる。
何も知らない雪乃は、大智はやはり美彩が好きで、自分を抱かないのでは?と悩む。
雪乃の前に、小さな男の子を連れた晶子が現れ、大智の子どもだと言う。
『愛されてなかった!』
傷付いた雪乃は、わずかな着換えだけを抱え、自宅を離れる。
雨の中、探しに来た大智は自分の子ではない、と説明する。