あらすじ

福岡県山奥にある<みまた村>。 かつては樟脳と呼ぶ天然の芳香・防虫剤で富を築いていた。 町までの鉄道が引かれ、遠方からの客人をもてなす洋館が建てられるほど。 だが、時代の流れにより需要は低下したことで村は衰退。 今では八〇超えの老人たちが住まう村となる。 村衰退の遠因は、高度経済成長期にて、高速道路建設に反対したこと。 樟脳の原料となるクスノキの山を切り開くのは、村を殺すと同じだからだ。 古くからのしきたりも重なった結果、若人は働き口と自由を求めて都市部に流出、栄華の象徴であった洋館は無人となる。 その洋館を、一人の女性画家がアトリエ兼避暑地として買い取った。 だが、女性画家は、結婚を間際に忽然と姿を消し、警察の捜査虚しく行方は分からぬまま。 10年後、大学生の藤木伊織は、サークルメンバーを引き連れて村を訪れる。 自ら掃除サークル<クリーン>を率いているが、活動が好評過ぎて、なんでも屋になりつつある現状に頭を抱えていた。 今回の依頼主は、祖父であるが、代理人として失踪した伯母の元婚約者が名乗り出る。 洋館内の未発見の遺品探査及び、開かずの金庫から中身を回収することであった。 過去、訪れた村であったが、村人たちは記憶にある以上に、よそ者に対して張り詰めた警戒心を剥き出しにしていた。 洋館取り壊しを反対する村人との衝突や、伯母に憧れる妹の香織が密航するトラブルに遭遇。 探索と称して洋館内を駆け巡る妹を追いかける中、伊織は思い出す。 この村では、毘麌(びぐ)様と呼ぶ黒き雄鹿を山の神として祀っているのを。 その威容を描いた絵が、回収品の中になかったことを。 かつて、伯母は、山の神をこの目で目撃したことを――

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カクヨム
カクヨム2025/01/01
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