あらすじ
ここは、現世とあの世の境目、賽の河原。
僕は、この河原に建つ「フェリーマンカンパニー」という渡船会社に勤める三途の川の渡し守。
今日も、渡船場から沢山の死者を渡し舟に乗せ、あの世へと渡している。
僕は、エフと呼ばれている。
どうやら僕は6番目にここへ来た渡し守らしい。渡し守A、渡し守B……6番目の僕は、渡し守F。
恐らく、過去には別の名前があったと思われるのだが、まるで思い出せない。何故ここで働いているのか。いつここへ来たのか。何も憶えていないのだ。
気がついたら、ここで働いていた。まったくトホホのホだ。
ちなみに、渡し守の仕事は、実際に船に乗って死者をあの世へ渡す、いわゆる「船頭」ばかりではない。
乗船する死者の受付。死装束や三角頭巾の配布。乗船員数・出船時刻の管理。渡し舟のメンテナンス。などなど。仕事内容は様々。
僕は、数年前から最終決断補助者《ファイナルジャッジヘルパー》という仕事に就いている。
毎日現世とあの世の境目にある賽の河原で働いていると、時折、生者とも死者ともつかぬ、ワンダラーがふらりと訪れる。
ワンダラーが、三途の川を渡るか否かを決める。つまり「生きるか死ぬか」の最終決断をする。そのお手伝いをするのが、僕の仕事。
ファイナルジャッジヘルパーと言えば聞こえはいいが、まあ、事実上現場のトラブル処理係。
ほら、今日もこの賽の河原に、生者とも死者ともつかぬ悲しきワンダラーがやって来た。