あらすじ
東北の十和里山の村では、古くから西洋の神々が持ち込んだ命を延ばす「紡ぎの時計」という不思議な伝説が語り継がれている。この作品は、十和里山伝説に惹かれた勇士たちが愛と死の狭間で揺れる運命を描いた現代ファンタジーである。
主人公の勇希は医学生で、フリーマーケットが趣味だ。恋人の薫は白血病という重い病に苦しみながらも、かわいらしい女性だった。薫の命が危機にさらされる中、二人は偶然、フリーマーケットで初老の根本と出会う。彼は孫娘が白血病で亡くなった過去を持ち、その伝説を追っていたことを打ち明ける。しかし、その探求は大きな代償を要求し、孫娘は黄泉の国で歌姫として生きることになっていた。
根本の話に心を打たれた勇希は、薫の命を救うために奇跡を求めて十和里山へと向かう決意をする。しかし、そこで待ち受けるのは神々からの厳しい試練と罰だった。旅路で薫は白血病が悪化し、動けなくなってしまう。その時、運命的に二人の助っ人が現れる。一人は伝説本の作者である根本の娘、もう一人は根本の教え子で、白血病の専門医の野口だ。男は娘と不倫関係にあるが、娘は根本の隠し子だった。勇希に関わる人々もそれぞれに秘密や因縁を抱えており、物語が進むにつれて、彼らも不思議な運命に巻き込まれていたことが明らかになる。神々との契約は重い代償を要求し、彼らは愛と死の狭間で揺れ動くのだった。勇希は自分の命さえも犠牲にして、樹氷の神々に薫の命乞いをしようと決心する。
しかし、根本は薫の容態を心配し、娘と共に勇希と薫を残して神々のもとへ赴く。神々は父娘に怒りの天罰を下し、二人は突然の雪崩に飲み込まれてしまう。残された勇希は絶望の淵に突き落とされる。しかし、野口は彼を励まし、薫を必死に助け出すのだった。現実と非現実が交錯する純文学的な作品で、勇希と薫の愛は紡がれるのだろうか。