あらすじ
一振りの剣があった。
負の感情が寄り集まって魔物と化し、人に取り憑く歪な世界で、唯一魔物を廃せる一振りの剣。
弱い心は魔物に魂を食べられてしまうから。
正しい行いをしていれば、魔物を廃する剣を携えたユリウスと名乗る美しい人が助けてくれる。
そんな御伽噺を幼い時分に聞いて育つ。
だが、所詮御伽噺。
何かの教訓話だとしても、真に受ける者がどれ程いようか。
月の女神を信仰する大国月星には、タビスという神官がいる。
女神の刻印をその身に持っち生まれ、女神の代弁者と云われつつも、声すら届かない女神を当代のタビスは信じていなかった。
だが、ユリウスのことは信じた。
実際に魔物と接触したタビスは、魔物を廃する御伽噺を辿り、ユリウスを探し出し、その剣を手にした。
月日が流れた。
巫覡を始祖とし、竜の加護を持つ竜護星。
その国主だった女王レイナは、三十六歳という若さで病いで逝ってしまった。
忘れ形見の娘マイヤは先祖返りの真正の巫覡だった。
巫覡たる娘の力を借りながら、タビスは再びユリウスを探している。
四歳歳下の妻レイナの死から二十五年。
タビスの姿は三十歳程度の姿のまま歳をとっていない。
人ならざるユリウスには、人の一生はあまりに短い。
剣を預けたことで、タビスに何かをさせたいユリウスは、約束を果たさせる為に彼の歳を停めたという。
今代のタビスの名はアトラス・ウル・ボレアデスといった。
月星前王アウルムの弟である。
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※本作は小説家になろう様
カクヨム様に長編として投稿している作品の抜粋です。
十二章「鴉の思惑」の改訂版にあたります。