あらすじ
「父さんな、会社を辞めてダンジョンで食っていこうと思うんだ」
そう言ったひと月後に、父は命を落とした。ダンジョン探索とは一切関係のない暴走車による事故で、即死だった。
父を殺した運転手は上級国民だったので実刑を受けなかった。
父子家庭で、たった一人の家族を失った僕に残されたのは、幾ばくかの示談金と、父がダンジョン探索者になるために購入した人型ロボット、探索機だった。
ダンジョンに出現するモンスターは人間より何倍も大きく、生身ではとても相手にならない。人間が巨大モンスターと対等に戦うためには、巨大人型ロボットが必要だった。それが探索機である。
昔のロボットアニメが好きな父だった。探索者になるのが子供の頃からの夢だと語り、探索機を買うための資金をこつこつと貯めていた。事故に遭ったのは、ようやっと夢が叶うという矢先のことだった。
母はいない。おめでた婚の一年後に母の浮気が発覚して離婚していた。僕と父とは血が繋がっていなかった。それでも父は、僕を実の息子として育ててくれた。
親というものは子に幸福に生きることを願い、父もまたそうだと思う。
けれど、それは嫌だと僕は思った。
父の夢を、父に代わって叶えたい。父の無念を晴らしたい。
探索者とは、命がけの職業である。暴力を事とするため、世間からはやくざな人種と見なされている。普通想像する幸福な生活とは決して相容れない。ローンだって組めない。
父が生きていたら僕を止めるだろう。父は夢追い人だが、人の親としては真っ当に過ぎるところがあった。
それでも僕は探索者になると決めた。
高校へは進学しない。探索者学園にも通わない。一刻も早く探索者になりたくて、中学卒業、義務教育の終了後すぐに探索者資格をとった。
こうして俺、探索者相葉勝は誕生した。
父の残したロボを駆り、父の夢見た冒険の日々を始めたのである。