あらすじ

江戸・吉原の花街。妓楼の奥座敷で、浪人 篠宮 は遊女 椿 と盃を交わしていた。刀を捨て、行くあてもない侍崩れの男と、金で夢を売る女。二人が交わすのは、恵方巻を肴にした戯れ言。

「恵方を向いて、願いを込めるのが作法だって——」

そう囁きながら、椿は静かに寿司を口へと運ぶ。その艶やかな仕草に、篠宮の心にわずかなざわめきが生まれる。

「お前は何を願う?」

「……願ったところで、叶うものなんて何もないわ」

しかし、椿の瞳には、決して言葉にはできぬ想いが宿っていた。そんな彼女がふと呟く。

「——なら、今夜だけ、あたしの客になって」

妓楼の片隅で、侍崩れと遊女が交わす儚き逢瀬。月明かりに照らされた二人の影は、ゆらゆらと揺れながら、夜の帳へと溶けていく——。

だが、吉原の夜は甘いだけではない。花街を陰で牛耳る者たちの間では、血が流れる争いが始まろうとしていた。椿もまた、ある者の手によって弄ばれようとしていることを知り、篠宮は葛藤する。もう剣は取らないと決めたはずなのに、それでも目の前の彼女を見捨てることなどできるはずがない。

静寂の夜に響く、剣戟の音。守るべきもののために立ち上がる男の運命は、果たしてどこへ向かうのか――。

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アルファポリス
アルファポリス2025/02/02
  • 現在の作品無頼の浪人、吉原の闇を斬る