あらすじ

私は、今まさに読み終えたホラー小説を閉じ、読後感を味わっている。

通勤時間を利用してコツコツ読み進めるつもりが、あまりの面白さに家の近くの公園のベンチで最後まで読み切ってしまった。

新進気鋭のホラー小説家の新作「単眼犬パキャ」という奇抜なタイトルとは裏腹に、およそ犬とは思えぬ狡猾さと卑劣さ、そして人智を超えた知能で人々を恐怖に叩きつける怒涛の展開に、自分もその世界の住人のような気持ちで読んだ。

「それにしてもパキャってなんだよってな」

独り言。誰に言うわけでもない、目的のない言葉が、風に乗り静かな公園で異様に響いた。

『パキャを馬鹿にしたのかな?わん』

どこからともなく、嗄れた老人の声が聞こえた、気がする。
周りを見るが、誰もいない。

フフッ、読んだ後も楽しませてくれるなんて、なんていい小説なんだ。
ベンチに置いた小説を指でなぞる。

『パキャ』

「痛っ、ぐっ、とゅ、がぁぁ」

人差し指の第二関節から先が、何かに齧られたように消えた。

あまりの痛さと、泡立つ油に指を突っ込んだような熱さを感じる。

「いてぇ、いてぇって、ちょっと。痛い、痛い、痛いよ」

「あの、大丈夫ですか?」
若い女性の声に顔をあげると、そこにはお爺さんが立っていた。

「いや、ちょっと、指、え、あの、貴方目が」

お爺さん、と呼んでいいのかわからない。背丈や雰囲気は老人だが、目が鼻の付け根に一つだけついており、髪は長く、唇はプルンとハリがある。
若い女のように見えるし、老齢の男性のようにも見える。

「指、どうかしたんですか?」

「え、あの、指が、あれ?」

指を見る。
痛みもない。

「ああ、すいません。指、大丈夫そうです」

そう言って顔を上げると、目の前に居たはずの何者かの姿は消えていた。

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アルファポリス
アルファポリス2025/01/22
  • 現在の作品ホラーを読んだばかりに