あらすじ

「こんな店、二度と来ないわ!」

怒りをあらわにした女性客の言葉が、寿司職人・寿 司郎(ことぶき・しろう)の心に深い疑問を投げかける。

客は、寿司をただ楽しむのではなく、まるで「高級寿司を食べる自分」を見せびらかすことに夢中だった。

寿司の味、そのものには興味がない。
彼らが求めているのは、あくまで「富の象徴」としての高級寿司であり、「一流の店にいる自分を」世間やネットで自慢することだった。

司郎は、高級和食店で寿司を握る日々を送っていた。
誰よりも美味しい寿司を追求して、技術を磨いてきたはずだった。

しかし大半の人には、魂を込めた自分の寿司は、届かなかった。
工夫し、試行錯誤を重ねてきたその逸品には、誰も興味が無い。

「俺はこのままでいいのか……」

「ただ俺は、お客さんが美味いと言って笑顔になってくれたらいいのに……」

自分の人生を考え直したそのころ、料理長から司郎に、海外出張の案件を任される。

最初は逡巡した司郎だったが、「何かが、変わるきっかけになるかもしれない」と単身で現地へと赴く。

しかし赴いた先には、司郎の希望はなかった。
そこでも、富裕層のステータスとして、寿司が、ブランド品のように消費される、光景を再び目の当たりにする。

その一方で、同じ国に住みながら貧しさに苦しむ人々は満足に食事すらできなかった。

「寿司は、本来どんな人にも手が届く料理だったはずだ。
金持ちの道楽じゃない。
寿司をもっと身近に、心から楽しんでもらえる店を作りたい……」

その願いを胸に帰国の途についた司郎。

しかし、その夢を果たすことなく飛行機事故に巻き込まれ、彼は命を落としてしまう。

目を覚ました彼の前に現れたのは、あの釈迦だった――。

「君の寿司への思いは素晴らしいね。
人のために見つけた夢だろう?
それなら、新しい世界でその夢を叶えてみないかい?」

釈迦の導きにより、司郎は転生を果たす。

しかし転生した先は、魔法と魔物が存在する、異世界のダンジョンだった。
そこには寿司はもちろん、握り飯すら存在しない。

司郎は剣も魔法も扱えないただの赤子。そんな彼を母親として支えたのは、最強のドラゴンと、迷宮の牛の魔獣だった。

遭遇したばかりの時は、魔物達に狼狽えるが、前世の寿司職人の経験とそして釈迦がくれた、食を通して魔物と通じる「スキル」によって、彼女達と心を通わせていく。

ダンジョンの米や魚、そこでしか採れない希少な食材を使った「ダンジョン寿司」は、次第に魔物だけでなく、魔族や冒険者の間でも話題になっていく。

食を通して、絆を得た魔物達とともに異世界で寿司屋を営みながら、司郎は寿司を通して、人々を笑顔にするため奮闘する。

これは、寿司職人が異世界で握る“最高の一貫”と、新たな絆を結ぶ物語。

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アルファポリス
アルファポリス2025/01/21
  • 現在の作品異世界ダンジョン寿司屋 ~魔物も冒険者もマグロに夢中!?~(平日午前7時半・21時に更新)