あらすじ
ある日、姉ちゃんの胸に穴があいた。首の少し下の位置に、野球ボールくらいの大きさの穴がぽっかりと。向こう側がはっきりと見えるほど、くっきりと。
最初にその穴に気づいたのは母さんだった。朝、リビングに来た姉ちゃんのパジャマの襟元から、穴の端が見えたんだって。僕はまったく気づかなかった。ちなみに、父さんはそのとき、もう出勤していた。
母さんは「どうしたの、それ!?」と騒ぎながら姉ちゃんに訊ねた。でも、姉ちゃんは何も言わず、朝ごはんにも手をつけなかった。
その日、姉ちゃんは学校を休んだ。僕も気になって休みたかったけど、母さんに追い立てられて仕方なく家を出た。学校にいる間もずっと気になって、帰るなり「病院どうだった?」と母さんに訊ねた。病院に連れて行くと言っていたんだ。でも、母さんは首を横に振った。姉ちゃんがどうしても家から出たがらず、結局連れて行けなかったんだって。姉ちゃんは部屋に閉じこもり、仕事から帰った父さんも部屋の前で困り果てていた。