あらすじ
〝さっこら ちょいわやっせ 〟
大人達が腹に乗せた太鼓を撥で叩きながら唱えた。幸呼来、すなわち鬼が去り幸せよ再びやって来いという悪い羅刹鬼を追い払った神様への感謝の言霊だった。鬼は悔い改めた印として巨岩に「手形」を押した。岩に手形の意から『岩手』の名が生まれたと伝わった。神様は二度とこの地に来ないよう諭して放免した。その岩手を擁する南部領は本家の三戸を含めて一戸、二戸と続き、九戸まで九つの戸に分かれている。三戸氏を守るために、それぞれ領内に置かれた分家の単位である。三日月の円くなるまで南部領と言われた北の剣吉村の長の下に、子が生まれた。彦太郎と名付けられた。後の北信愛であった。産後の肥立ちが悪かった母は子が一つ歳をとる前に死んだ。五歳になった御祝いに父から小刀を貰った。