あらすじ
収容所で母語を禁じられ、夜更けに一人日記を書くことを愉しみとするトーリ。
最愛の兄の迎えを待つ彼女は、ある日、兄にそっくりな男と出会う。
国も母語違うが日記を通して距離を縮める二人。けれど、根底にはそれぞれ怒りの感情が煮えていた──
この作品は第4回日本SF作家クラブの小さな小説コンテスト「さなコンN部門」の共通文章から創作したものです。(最終選考作)
『見返した日記には、一ページだけ意味のわからない箇所がある。』という『』内の一文を「書き出し」とする縛りで書かれています。読了後にあらすじを読むことを推奨します。
詳しくは、下記URLを参照ください。
https://www.pixiv.net/novel/contest/sanacon2024
〈あらすじ〉
地球は危機に瀕しているとして、外星人による地球保護が宣言された。統制のため階級制度が敷かれ、〝私〟ことトーリは最愛の兄オリトと別れて強制収容所に入れられる。
収容所では母語は禁止され、良き星の民としての言語教育がされていた。
私は口が利けず、代わりに導き手のトノハタさんによって日記の添削をされていた。兄と過ごした疎開先の雪原の夢を見て、最もふさわしい白紙のままで出したが、事実を書くようにと指導される。トノハタさんは声帯手術を受けた準二級星民であり囀りのような正しい普遍星民語を発するが、私は言葉の強制によって世界の認識が変わってしまうとして嫌悪していた。
私は書くことにより、自分を保ち、兄の迎えを待っていた。図書室で執筆していると、兄に似た青年ジニがやってきて、ノートを読ませてほしいと言われる。彼は私の母語の読み書きができた。私はノートの調達と交換条件で了承する。
ある休日、執筆に行き詰った私は、ジニに強制収容所の〈辺縁〉の植樹林に連れていかれる。私はリフレッシュできたが、そこに立っていた鉄扉を殴るジニを見て彼もまた理不尽な世界に怒っていることを知る。
二人は通じ合うが、ジニがトノハタさんの伴侶として収容所を出て行くことを知り、彼にもう図書室には来ないよう告げる。ジニは、私の国がかつてジニの国を支配し、外星人と同様に言語を強制をしていたことを指摘する。
私は思わず声を上げるが、その声は囀りであった。私は兄に騙され、声帯手術を受け母語を発せなくなっていた。私は逃げ出し、植林樹の鉄扉を囀りで命じで開き、収容所の外の世界へ出る。そこは隕石による極寒の氷河期が訪れており、実際に外星人によって人々は保護されていたのだった。
上記の話は、作家・綾部藤里が少女時代にノートに書いた創作であり、彼女の元に埋められていたノートが50年ぶりに届けられる。しかしそこは第二次大戦後に隕石が落ちて氷河期が訪れており、創作とは違い外星人による保護はない世界だった。