あらすじ
――初めて彼女が空を越えたいと言った日のことを、私は憶えている。
ここではないどこかの国の、今ではないいつかの時代。『私』は、良妻賢母の育成を目的とする女学院に通う、無口で、人付き合いの悪い、一言で言えばさえない女学生だ。
ある日の放課後、愉快ではない出来事から逃げ込んだ屋上で、『私』は『彼女』と出会う。運動の成績が抜群に良く、性格は明るく、友人も多い『彼女』。見知らぬ仲ではないが友人ではない『彼女』と二人きり、という微妙な空気に戸惑う『私』に、『彼女』から不意に問いが投げかけられる。――空って、どうやったら越えられるのかな、と。
『彼女』が発した何気ない疑問が、小さな問いが、いつしか二人の人生を思いもかけない方向に引っ張ってゆく。空を越えて、その向こう側に行きたいと願う『彼女』と、その夢を共有することになった『私』。これは、そんな二人が歩むことになった、細く長い道のりのお話。
*この作品は、2020.3.23 に魔法のiらんどで投稿した作品を編集したものです