あらすじ
◆秋山純生(あきやま・すみお)は、高校三年生で、進路を美術系か理系の大学か悩んでいた。
母、秋山幸子(あきやま・さちこ)が、「二つとも卒業すればいい」と助け船を出す。
おそらく、父、善(ぜん)は大反対だったろう。
最初の美術大学で人間関係と卒業制作のテーマへの批判に挫折を感じ、マンドリン・ギター部でも残念な思いをした。
二つ目の理系大学でも管弦楽部のデカダンスさに辟易し、偶々同じ学部の学生でも痛い方々と気を配って疲れていた。
究極の避難として退学しようと思っていたが、母が押しとどめた。
二年生となり、友人の玉(たま)ちゃんもできたことだし、気分を一新しようと趣味の合う部活へ入り直した。
アニメーション研究会の門戸を叩く。
紅林朝(くればやし・あした)と知り合い、初めての恋は走り出し、将来は結婚へと夢を描いていた。
純生は先に社会人となった彼を追って東北の果てまで大学院へ進学するが、慣れない環境のせいか病に伏してしまう。
書類上の入籍をし、紅林純生となったが、生活は別々にしていた。
翌年の春、私は同居が必要なほどにだらっと崩れてしまう。
彼の職場と私の大学院との中間地点に居を構えた。
病魔は激しく私を揺さぶり、夫が夜に帰宅して早朝出勤するだけでは、ひとりで留守番は無理なことは明白で、医師からひとつの提案があった。
「日中の面倒をみてくれる方を呼べませんか?」
夫は新婚家庭が乱され、蔑視している者が分け入ることに抵抗したが、実母の幸子が東京から高速道路で駆けつけてくれた。
父の善は、私を怠け病だと笑いものにした。
怠けていたら皆勤賞がとれるのですか。
怠けていたら上位三パーセントの成績で人物も推薦される特待生になれるのですか。
後に、父は母のいない家に屈服する。
弟の陽太(ようた)にお金のかかる時期だったので、仕送りは少ない。
私は殆ど家を出られず、誰かが付き添ってくれても難しいのに、川岸へ母の好きな自然観察をしに散策することがあった。
二人の瞳には、美しいとか生きるとかの安い羽飾りは要らない。
「白鳥だ……。向こうに白鳥がいるね」
景色と月日が流れるだけでいい。
そして、家族の形は変わっていく——。
◆登場人物
紅林純生(くればやし・すみお)/旧姓・秋山純生(あきやま・すみお):女性。主人公。夫をあーちゃんと呼ぶ。大学院生。
紅林朝(くればやし・あした):男性。主人公の夫。妻をすっちゃんと呼ぶ。両親と妹と祖父母がいる。畜産を主にする。農業も手伝う。その後転職する。社会人。
紅林冬眞(くればやし・とうま):男性。主人公夫婦の長男。就職先が内定しているが、今も資格試験を受けている。優しく真面目。
紅林春美(くればやし・はるみ):女性。主人公夫婦の長女。高校一年生。感受性が豊か。ママ思い。
秋山幸子(あきやま・さちこ)/旧姓・亀野幸子(かめの・さちこ):女性。主人公の母。経理をいている。母親というものに理想像がある。
秋山善(あきやま・ぜん):男性。主人公の父。建築会社の社長。気性が荒く、自己中心的。お酒で取り返しのつかないこともする。
秋山陽太(あきやま・ようた):男性。主人公の弟。関東の大きな神社で禰宜をしており、妻と二人の子がいる。
◆全7話。
2024年11月30日より公開開始。
毎日、18時18分更新。初日は早めです。
◆よろしくお願いいたします。